「酒を飲むのに理由はいらない」か
お酒ってなんて居心地がいいんだろうと
20歳の大学3年の春頃、薄い水割りに「なんてお酒って居心地がいいんだろう」って思いました。寝る前にウイスキーの水割りを2杯ばかり飲んで、日記を付けたりして、
そんなお酒が自分の世界を楽しく広げてくれるのがすごくうれしかったんです。でもそれがすぐに、昨夜のことも覚えていないくらいの深酒になってしまいました。
外に出て飲むこともせずに、自分の部屋でテレビやラジオを相手にしながら飲むものだから、自分の酔い加減がわからない。ただ量だけは元々飲める口を持っていたらしく
て、どんどん増えました。最初は数杯で気持ちよくなっていたものが、3か月もしないうちに朝、起きてみると洋服を着たままだったり、半分以上減っているボトルを見て愕
然としたりして。「しまった……また、こんなに飲んじゃったんだ」。しかも昨夜の記憶がないのです。
3年の春にお酒っていいなって思ったものが、夏には「もう今日だけは、今晩だけは飲まないでおこう」って、それも我慢できなくなりました。そして秋、いくらなんでも
自分のお酒の飲み方が異常じゃないかと心配になって、本屋で『家庭の医学』なんかを立ち読みするんです。でも、それを読んでも「私は心理的な依存かもしれないけれど、
まだ身体的な依存にはなっていないから、ここで休肝日をつくって、1週間に1日でも2日でも飲まない日をつくれば飲んでもいいんだ」というように、何か何でも「飲んで
もいい」方向に無理矢理もっていってしまうんですね。
4年になって短大に進学して上京してきた妹との2人暮しが始まりましたが、「お酒の臭いがする姉ちゃんなんか嫌だ」っていう妹だったので、当然のように妹が学校に行
っている間の昼間のお酒になりました。それからはどうにもならなくなるまで、あっという間だったです。
結局4年の夏休みに田舎に帰省した時に、私のお酒がとんでもない飲み方になっていることに驚いた両親に、地元の精神神経科に連れて行かれ、その場で入院する羽目にな
りました。
本当に私は、お酒なんて味わって飲むことをしらないうちに依存症になってしまって、気が付いたら病院。なんでこんなことになってしまったんだろうかって思うんですけ
ど、自分で自分のことがわからないままに病院を出たり入ったり。自分の人生が、どこかおかしいって思うんです。そして、それがお酒が原因だっていうことは分かるんだけ
ど、やめるってことが全然頭にないもんだから、どんどん心が曲がっていきましたし、そのたびに両親を奈落の底に突き落とすようなことばかりを繰り返してきました。
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