ひきこもり・飲酒・摂食障害

クロス・アディクション

ひきこもり・飲酒・摂食障害

 私がアルコール依存症と摂食障害になった原因は、幼少の頃から少しずつ築き上げらてしまったようだ。私が生まれ育った時代は高度経済成長期で、日本の経済が急激に発

展していった頃だ。学校教育も詰め込み式で、無理な授業の時間割も多かった。生徒1人1人の個性が尊重されるよりも、他の人と同じことをできることが求められ、画一的

な教育体制がその時代にはあった。
 私は学校生活が小学生の頃から息苦しかった。加えて家庭環境、私自身の性格、全てが重なり合いそれが偶然裏目に出て、私が自分自身を破壊して行く原因になった。中学

3年の時にはうつ状態になり、高校に進学してすぐ、今でいう「ひきこもり」になった。そして、今にも壊れそうな心をつなぎとめるものが、たまたま「お酒」だったのだ。

仮に近くに薬物があったなら使っていたと思うし、犯罪も犯しかねなかっただろう。現実逃避できれば何でもよかったのだと思う。
 私の両親はまじめで、第一に世間体を一番気にする人だ。3人姉妹の末っ子として生まれた私は、過度に期待されながら育った。子供心に両親の愛情が常に欲しくて、意識

してほめられる行動ばかりしていた。常に姉達に負けないようにがんばっていたのかも知れない。他人に姉達と性格や容姿などを比較され嫌だった。そんな心無い人達の言葉

を真に受けて、親ばかりでなく他人に対しても、受け入れてもらうために自分を押し殺してまで他人が期待する言動を察知して、その通りにしていた。
 子供の頃は体格がよく肥っていて、内気で恥ずかしがりやだった。勉強も頑張っていて、素行もよかったので優等生の部類に入っていた。しかし、肥っていることだけで先

生や男子生徒にからかわれ、いじめられてしまった。その年頃の子供というのは、対象の人物が本当に嫌いでいじめることは少ないのだろうが、私にはその時、それが理解で

きるはずもなかった。それに、言葉だけのいじめならがまんできたが、ベランダから石を投げられたり、机や椅子に画鋲の針を上にして一面に貼り付けられたりなど、暴力や

無言の嫌がらせには苦しめられた。
 中学の3年間は特にひどかった。泣きたいのをがまんして、何をされても笑っていた。親友にも家族にも私が悩んでいることは明かさなかった。外では笑って、そんなこと

には動じていないふりをして、強い優等生の仮面をかぶり、しかし、毎日のように家に帰って1人で泣いていた。そんなことはよくあることだと今は思うが、その年頃の私に

とってはとても辛い毎日だった。肥っている自分自身を憎み、心はズタズタに引き裂かれていくようだった。
 今考えると何てバカだったのかと思う。自分が弱い人間だと思われたくなかったからなのか? 何故一言「辛いからやめて!」と言えなかったのか? あんなに傷ついてい

たのにかたくなに心を閉ざして、私は一体何を守ろうとしていたのだろう? 誰も私のことを強くて立派な人間だなんて思ってもいなかったのに、私は勝手に思い込んで、自

分で作り上げた自分のイメージを壊したくなかったのか? なんという思い上がりだったのだろう。

 そんな私だったが、絵を描くことや、ものを作って自分を表現することが大好きだった。しかし、その自由な表現さえ、当時通っていた学校では否定されることがあった。

授業で絵を描いていると先生に「大人のまねするんじゃない」と怒られた。まねなんかしていなかった。頭の中で思い描いたものを素直に表現していただけだった。何故怒ら

れているのか分からなかった。人とは違った色使いや筆使いをすると、やめるように言われた。そして、いつも最後には「子供らしい絵を描きなさい」
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